令和5年度税制改正から「贈与」の変更になる点について

所得税等の確定申告も終わりましたが、弊所では令和4年分は贈与税の申告件数が多くなりました。

年末に発表された「税制改正大綱」の影響も多分にあったのではないかと思います。

そこで、今回改正になる、①相続時精算課税制度の見直し、②生前贈与加算の加算期間等の見直しについて解説いたします。

まずは、①相続時精算課税制度の見直しについてです。

相続時精算課税制度とは、原則「60歳以上の父母※1(もしくは祖父母)等」から「18歳以上の直系卑属※2等」に対して、生前贈与をした際に選択できる贈与税の制度です。(養子縁組した子供や孫への贈与については、養子縁組後の贈与のみ相続時精算課税制度を適用できますが、養子縁組前の贈与については制度を適用できません。)

※1 年齢は贈与の年の1月1日現在

※2 直系卑属とは「直通する系統の親族で自分より後の世代の人」のことを指します。子や孫などが該当し、養子も含まれます。兄弟や姉妹、甥(おい)や姪(めい)、子の配偶者は含まれません。「親子関係で結ばれている自分より後の世代の人」が直系卑属にあたります。

相続時精算課税制度を選択すれば最大2,500万円の特別控除を適用することができ、2,500万円を超過した贈与財産については贈与税の税率が一律20%となります(贈与財産の種類に制限はありません)。

相続時精算課税を適用した贈与財産は、相続財産に加算されます。

《改正前計算式》

(贈与価額―2,500万円)×20%=贈与税額

今回の改正は前述した2,500万円とは別に、贈与した年の課税価格から110万円を毎回控除することができるようになります。110万円を超えない贈与は、申告不要で、かつ将来の相続財産への加算も必要ありません。

発生時の持ち戻しの金額が令和6年1月の相続時精算課税制度から贈与を行った年分×110万円の控除をした金額を相続財産に加えて相続税額の計算が行えるようになります。

《改正後計算式》

(贈与価額―110万円-2,500万円)×20%=贈与税額

次に②生前贈与加算期間等の見直しについてです。

「相続に備えて、事前に財産を子供に贈与して、相続税の負担を軽くする」とお考えの方は以前より多く居られます。今の税制でも相続開始前3年以内に贈与された財産については、相続財産に加算して相続税が課税されることになっています。これがさらに、令和6年以降に贈与された財産については、その期間が段階的に7年にまで延長されます。

生前贈与をすれば、贈与税がかかるのですが、その贈与方法によっては、相続税よりも安くすることができるため、亡くなった人(被相続人)が生前に相続人に対して生前贈与をすることがあります。

このような生前贈与による相続税を支払わないようにすること(相続税の租税回避)を防止するために、上記のような方策がとられているのです。

これは、一般に「生前贈与加算」と言われます。

「生前贈与加算」とは、相続などにより財産を取得した人が、被相続人(亡くなった人)からその相続開始前3年以内(死亡の日からさかのぼって3年前の日から死亡の日までの間)に贈与を受けた財産があるときには、その人の相続税の課税価額に贈与を受けた財産の贈与の時の価額を加算します。

また、その加算された贈与財産の価額に対応する贈与税の額は、加算された人の相続税の計算上控除されることになります。

この3年前という部分が7年に延長され、4年から7年の贈与財産の合計額から100万円を控除した残額を相続税の課税価格に加算することになります。

改正後はどちらを選べば良いのかは難しい判断になります。

例えば、毎年500万円ずつ10年間贈与した場合は下図のようになります。

※年間500万円を贈与し10年で相続が発生した場合の相続財産に加算する価額

どちらの制度もともに10年間で500万円ずつ5,000万円贈与しましたが、相続税に加算されるのは、精算課税の場合3,900万円、暦年課税では3,400万円となります。

 暦年課税、相続時精算課税制度の選択による有利不利は、贈与者の年齢・贈与価額等の個々のケースにより違ってきますので、判断は難しいのです。

 この「何年贈与し続けられるか?」は誰もわからないので、どちらが?という判断は難しいのです。

 ただ、贈与者がお二人(例えば父、母)いるような場合には、精算課税で110万円、暦年課税で110万円と220万円の基礎控除を使うことが可能になります。

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